子供としつけ ともに育つ

しつけと虐待

 

 

私が保育士に転職しようと考えたのも目の当たりに虐待を見たからです。対岸の火事と思っていた虐待。近い友達夫妻で行われていた現実。児童虐待が社会問題となった今、それぞれの家庭で十分な配慮がされていることでしょう。そんな中でも、児童虐待に関しての相談は、厚生労働省の調査で9万件(平成26年調査)もあります。子育てをする中で、「いい加減にしなさい!」という声が聞こえてきますが、その時にたたいたり、つねったりすることが常習化しますともちろん虐待ということになります。

 

ましてや、子どもが乳幼児の場合には抵抗が出来ませんから、弱者への攻撃となり、決して許されることではありません。後にしつけのつもりだったということを言う両親もいますが、ダメですね。保育園にはこの虐待を見抜き通報する義務があります。

 

ある日、体操服に着替えるときに「Aちゃんの背中にあざのようなものが数箇所あるんですけど・・・」と5歳児担任が見つけて、園長先生に報告したときのことです。まずAちゃんに聞きましょうということで聞いてみますと、泣いて何も話そうとしません。仕方がないので園長先生が直接お母さんに聞くことになりました。その時のお母さんと園長先生の会話です。

 

『最近特に言うことを聞かなくて、私が背中をぎゅっとつねってしまったんです。「遊んでは片付けもせずにお風呂に入らないし、ごはんもテレビばっかり見てちゃんと食べないし、ほんとうに困ってしまって。』

 

「お母さん、よく話してくれたね。たいへんだったでしょ。子育ては、子どもを何人産んでもたいへんなんですよ。私自身も娘が幼少の頃に手を出したこともありますよ。「こらーっ」と娘の手を引っ張ってね。反省するまで許さないって思っていたけど、なんと言っても3歳や4歳の子に「反省」なんていっても通用しないもんね。しつけは、気長に行こうって決めて、子育てをしたものよ。」

 

決して虐待のニュアンスを出さない園長先生の言葉です。あくまでもしつけとしてお母さんがどうしていくかというお話です。しつけは、子どものためにすること、虐待は子どものためにはならない、自己満足のためにやることなのです。少し前に、山の中に子どもさんを放置して、大さわぎになったという事件がありました。これも親御さんが勘違いされたのでしょう。

 

親御さんは、切羽づまった挙句の果てに放置するというしつけをされたということですが、世間は、これは明らかな虐待という受け止めでした。外に置き去りにするだけでなく、殴る蹴る、寒い日に長時間締め出す、子どもを無視するなどの行為も虐待です。しつけとして、子どものためにと思ってしていた行為が、実は自分の感情をぶつけるという自己満足になっていたという虐待が多いのです。

 

先ほどのお母さんは、後日園長先生を訪ねて来られ、次のようにお話されました。
『園長先生のお話を聞いて、1つ1つのしつけを今日までがんばっています。感情のコントロールをだいぶできるようになりました。とはいっても、まだまだ成長過程の子どもですから、人にだけは迷惑をかけないように言い聞かせています。子どもは思い通りにならない生き物ですね。私が産んだ子ですから仕方ないのかなあ。』

 

お母さんが、自分の感情のコントロールのことまでお話をされるということは、もう大丈夫でしょう。片付けない、食べない、寝ないなど、完璧にできることを期待するほうが間違っている、できないことが当たり前で、少し出来たら褒める、そんなゆったりとした気持ちが必要なのです。